英語のアンテナ

英語過敏な私のお話し

ソウルフードは勘違いされた和製英語

和製英語には種類がありますね。英単語から日本独自に造られた言葉や、読み方を間違えたり省略したものが定着してしまった言葉、単語は合っているけど使い方を間違ったもの、などです。その中でもソウルフードは使い方を間違った言葉ですね。


ソウルフードという表現はよく TV のバラエティー番組などで使われています。例えば「たこ焼きは大阪のソウルフードです」のように紹介していたりします。このソウルフードという単語の使い方は和製英語です。外国人に地域の人気料理を soul food と説明すると「???」になりかねません。

広島風お好み焼き

広島のソウルフード !?

音楽の世界でアフリカ系アメリカ人の音楽をソウルミュージックと呼びますが、soul food も同様で、アフリカ系アメリカ人の伝統的料理のこととなります。soul は名詞とくっついて「米国黒人文化の」「米国黒人のための」という形容詞として使われます。

 

英英辞典で soul food を引くと次のように出てきます。

the type of food that was traditionally eaten by black people in the southern US. (オックスフォード英英辞典)

Soul food is used to refer to the kind of food, for example corn bread, ham, and greens, that was popular with black Americans in the southern United States and is considered typical of them.  (コウビルド英英辞典)

どちらも米国南部の食事のことを指しています。

 

一方、日本の国語の辞書には、

アメリカ南部の郷土料理

の次に

ある地域やエスニシティー(あるいは個人)にとって、日常の食生活で欠かすことのできない食材や料理のこと。

と書かれています。


日本では、soul が魂や精神のことなので、「心の故郷」のよう精神に関係するとして「魂の食べ物」と勘違いされたのだと思います。

 

Japanese Soul Food

Japanese Soul Food

地域の自慢の珍味や名物は local delicacy や local speciality などと説明できるでしょう。欠かすことが出来ない食べ物となると staple food もあります。また、お袋の味としてであれば、 home cooking や、懐かしさと安心を与えてくれるという意味の comfort food というものがあります。

 

ソウルフードは勘違いされて英語には無い使われ方をするようになりましたが、外国語を使うときは早とちりも危険ですね。

 

ソウルフードの話は他の記事も合わせて書籍『英語でカツ丼ってなんていう?』の中でも取り上げています。ご興味があればぜひ本を手に取ってみてください。

 

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ギネスは黒ビールではありません。スタウトです。

 「日本のビールはほぼ一種類らしい」という台詞のTVコマーシャルが出てきて「それってテレビでばらしていいの?」と思って見ると、大手が出す缶の ”クラフトビール” の宣伝でした。craft とは匠の技術の工芸などに使う単語です。craft の意味を英語辞書で調べると、

an activity involving a special skill at making things with your hands.

つまり職人が一つ一つ手作りしたものがクラフトで、工場で大量生産したものはクラフトとは反対の位置にあるものですね。そこで craft beer とは小規模醸造所で作られた、大量生産のビールとは異なるビールを表すためにアメリカで使われ始めた言葉です。それが日本では大量生産の缶ビールとは… 。飲料メーカーもブームに乗ろうと、流行りのクラフトと名のついたビールや、黒いラガーをスタウトと呼んだり、日本独自の酒税法の定義の隙をついて、欧米の定義ではルール違反的なネーミングのものが結構ありますね。

 

 ただ「ほぼ一種類」というのは本当で、日本では「 〜 ビール」といって様々な名前のビールが販売されていますが、みな ラガー、特にピルスナーですね。ビールには Lager (ラガー)と Ale (エール) があって、日本のビールはラガーに分類されるものです。エールの方にはブラウン・エールや IPA といったものがありますが、その一つ Stout (スタウト)という種類にアイルランド、ダブリンのギネス (Guinness) があります。また、アイルランド共和国の第二の都市コークはダブリンと何かとライバルになりますが、コークにもスタウトがあり、マーフィーズ (Murphy’s) やビーミッシュ (Beamish) というブランドのビールです。

 

ギネス

Guinness

 日本ではギネスを黒ビールと呼んでいますが、これには少々抵抗があります。ラガーとエールは作り方が違い、ラガーは下面発酵、エールは上面発酵で作られ、味やコクが違います。日本では以前ラガーが黒くなっただけの黒ビールが多くありました。日本人で私が話した人の中には「黒ビールはちょっと好きじゃないな」という人が何人もいました。苦いだけのラガーの黒ビール (個人的な意見) の汚名 (stigma) が、スタウトにも負の影響を及ぼしてしまって、ギネスを飲まず嫌いの人が多いようで悲しいです。私がギネスを宣伝するなら「ギネスは黒ビールではありません。スタウトです。」というキャッチフレーズを考えますね。

 

 アイルランド人はギネスについてこう言います。

 Guinness doesn’t travel well.

 ギネスは旅が下手/ギネスは輸送に耐えない。

同じスタウトでも現地アイルランドで飲むと、より美味しいギネスが飲めます。旅行に行った際は試してみて下さい。ギネスは泡 (head) 以外の部分が真っ黒になるまで待ってから飲むとスムーズで、これが美味しく飲むコツです。アイルランド国内でも美味しいギネスとそうでないギネスを出すパブがあると話題になります。ちなみにダブリンで一番美味しいギネスが飲めると言う人が多いのが Mulligan’s というパブです。

Mulligan’s on Poolbeg Street

 

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英語でもテイクアウトと言いますよ。使い方が違うだけです

パンデミックが発生した後、飲食店では出前や持ち帰り対応のお店が多く見られるようになりました。今ではお店の外にはテイクアウトと書かれたのぼり旗をよく見ます。ネット上ではこのテイクアウトについて「英語ではテイクアウトとは言わない」とか「ほぼ使わない」とか、テイクアウトは和製英語だと言わんばかりの情報が氾濫していますが、英語でも takeout と言います。ただ日本でのテイクアウトの使われ方が間違っているだけです。動詞も名詞も形容詞もごっちゃにしてしまい、このような勘違いが生まれるのでしょう。


これはアメリカのTVドラマの字幕を表示させたものですが、

 ” … eating Chinese takeout, ”
 「… 中華の持ち帰り料理を食べたり、… 」と言っています。

こちらでは
 ” Sorry about the take-out, but with all the packing and ... ”
 「こんな持ち帰り料理でごめんなさい、(旅行前の) 荷造りがあって… 」と言っています。

TVドラマの中のテイクアウトを使ったセリフ

アメリカの TVドラマ

 

ファストフードのカウンターなどでは確かに「テイクアウトですか?」とは聞かれません。そこでは次のような感じに聞かれるでしょう。

 ・ For here, or to go?  (Is that for here or to go?) 
 ・ To stay, or to go?  

店の人は、お客さんが持ち帰り料理が欲しいのかを聞きたいのではなく、買った料理をここで食べるのか持ち出すのかを聞きたいだけです。それによって料理を、トレーの上に出すのか、紙袋に入れるかの対応が変わって来ます。(地域によっては料理にかかる税金も変わります) そこでカウンターでは「ここに居るのか、外に行くのか」ということが聞かれます。

 

 takeout は動詞ではなく、以下のように名詞か形容詞として使われます。

 ・ to eat takeout.  持ち帰り料理を食べる。
   (名詞:上記のTVドラマと同じ)
 ・ to order takeout food.   持ち帰り用の食べ物を注文する。
   (形容詞)

 

なお、take out :  動詞 + 副詞 の句動詞としての「連れ出す」、「抜く」、「殺す」、とは別物です。

 

Chip Shop

日本ではアメリカ英語の「テイクアウト」が定着していますが、イギリス英語では takeaway (テイクアウェイ) と言います。個人的にはイギリス英語の表現の方が持ち去るといった感じが出ていて「持ち帰り」には合っているように感じますが、いかがでしょう。

 

飲食店の案内表示などの英語訳も書籍『英語でカツ丼ってなんていう?』の中で一部、取り上げています。ご興味があればぜひ本を手に取ってみてください。

 

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ブロッコリーのイチ推しの食べ方

 ブロッコリーが「指定野菜」になって、大根やキュウリなどの他の野菜と同様に保護されるというニュースがありました。ちなみにブロッコリーは小房に分けて食べますが、このブロッコリーやカリフラワーの小房には英語の名前があって、 floret と呼ばれます。ブロッコリーはつぼみを食べているのですよね。そこで flor- は flower から、-et は小さいを意味して floret です。Grilled Cauliflower Florets などと英語のレシピに出てきます。

 ブロッコリーはキャベツやニンジンのように、私はそんなにしょっちゅう食べないなと思いつつ、大好きな食べ方があります。ブロッコリーの素揚げです。あるお店で食べてすっかりファンになりました。つぼみ部分がカリカリになったものがお気に入りです。ほんとにシンプルなのですが、塩をちょっと振って食べると最高です。ポテトチップスなどのスナック菓子をパリパリ食べるような感覚で食べられ、でも野菜なので罪悪感があまり生じないという都合の良い食べ物です。お勧めです。

ブロッコリー

<指定野菜の先輩たち (農林水産省のリストより) >
キャベツ、きゅうり、さといも、だいこん、たまねぎ、トマト、なす、にんじん、ねぎ、はくさい、ばれいしょ、ピーマン、ほうれんそう、レタス

 

 

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キッチンカーはカーじゃない。カーに多い和製英語

 キッチンカーが人気となり数が2.5倍に増えましたとニュースで言っていました。ところでこの「キッチンカー」は和製英語ですね。英語では food truck (フード・トラック《米》) や food van (フード・ヴァン《英》) になります。キッチンカーという名前は考えてみると「使う側本位の呼び名だなぁ」と思います。食べ物を購入するお客からすれば、車の中にキッチンがあろうがなかろうが関係ないですね。この法則から呼び名を付けると、アイスクリームを売る車はフリーザーカーで、コーヒーを売る車はブリューイングカー、パンを売るのはオーブンカーといったものにならないと一貫性がありません。

キッチンカー

キッチンカー

 

 日本語ではタイヤが付いているものはみな「カー」になってしまいます。そもそも、英語の car は乗客を乗せるエンジンの付いた車のことで、「乗用車」となるものです。そしてその他の車は、形や目的により wagon や truck といった呼び名に変わります。乗物という大きなカテゴリーとしては、カーではなくvehicle (ヴィエクル) が使われます。電気自動車は EV (electric vehicle) といって vehicle を使ってますね。エコカーは乗用車だけとは限らないせいか、英語では Green vehicle です。なお、乗用車以外で car になるのは鉄道の車両です。車両が carriage、coach《英》、car《米》になり、dump car は砂利や石炭などを積載して下ろす時に荷台を横にを倒す車両に使われます。日本語のダンプカーは dump truck《米》、dumper truck《英》となって、トラックです。


 キャンピングカーは英語では motorhome や、recreational vehicle、trailer house《米》、camper van、caravan《英》などになります。ベビーカーにも「カー」がついていますが、 英語の方は、椅子型は stroller《米》、pushchair、buggy《英》、箱型は baby carriage、buggy《米》、pram《英》です。面白いのは日本語のリアカーです。car の使い方は変ですが、リアという単語は知っていたんだと。それならなぜ rear-view mirror がバックミラーになっちゃったのでしょうね。リヤカーは英語では cart で、もっと詳しく説明したければ two-wheeled cart といった感じです。


 和製英語の多いクルマ関連の名前ですが逆もあります。英語では人や自転車で引っ張るお客さんを運ぶ乗り物を rickshaw (リックショー) といいます。エンジン付は auto rickshaw といったりしますが、この rickshaw は日本語の人力車の『力車』が語源です。

 

*《英》イギリス英語、《米》アメリカ英語

 

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コロッケとメンチカツにだまされた

この間、スーパーの惣菜コーナーにメンチコロッケというのがあり、ひき肉を揚げてあることを想像して買って家に帰りました。食べてみるとジャガイモを主体に、ミンチにした肉が普通のイモのコロッケより少し多めに入っているだけで、ガッカリしました。

 

日本ではイモが入っているとコロッケといいますが、ミンチが入っているとメンチカツまたはメンチになります。でも、カニクリームが入っているとカニクリームコロッケというし、カボチャならカボチャコロッケ、と呼ばれるので、メンチコロッケといえばミンチの揚げ物だと思うのは普通だと思うのですが私だけでしょうか。

フライ物の惣菜コーナー

メンチコロッケ ?

一般的にはコロッケはイモが入っているものを意味するようで、メンチコロッケとは全くまぎわらしい名前です。そもそも元となった croquette にはイモ料理という意味はなく、これもある意味、和製英語 (仏語) ですね。

 

日本では、基本的なパターンとして、芋や穀物系はコロッケ、肉系はカツ (トンカツ、チキンカツ、ハムカツ)、魚介系はフライ (イカフライ、アジフライ、エビフライ、カキフライ) といった感じで、croquette、cutlet、fries、が日本の独自解釈で進化した言葉ですね。

 

 英語では cutlet (トレット) はパン粉をまぶした薄切り肉を揚げたものや、鶏肉や魚のミンチを平たく揚げたものをいうのでメンチカツも入るでしょう。croquette (クロゥケット) はフランス語由来で英語でも使われて、ポテトの他にミンチ入りなどもあり cutlet と見た目もあまり変わりません。fry は揚げ物ということで、特に french fries  (《和》フライドポテト) を指します。

 

他のフライ物の英語訳も書籍『英語でカツ丼ってなんていう?』の中で取り上げています。ご興味があればぜひ本を手に取ってみてください。

 

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