英語のアンテナ

英語過敏な私のお話し

ネス湖のネッシーとグレンダロック

 2023 年夏にスコットランドにあるネス湖でネッシー探しの大規模な調査が行われたとニュースがありました。最新のテクノロジーを駆使して調査をしましたが、その後、何も見つからなかったということでした。ネス湖のネッシーは英語では Loch Ness monster と呼ばれています。オープンソースのオンライン辞典を見ると、ネス湖の英語の発音として「ロッホ・ネス」と書いてあったので、「ロック・ネス」と修正したところ、コンテンツの番人に一瞬にして元に戻されました。発音記号が隣に書いてあって間違いと分かるのにね。(この辞典の日本語版は外国の情報に関しては間違いが多いですね。)

ネス湖のネッシー

Nessie

 Loch はケルト語派では湖のことです。スコットランド・ゲール語やアイルランド語に出てくることがあり、 発音記号では [lɑx] や [lɔx] です。[x] は無声の摩擦音になります。英語には無い音で、ケルト系の言語を話さない人のことを考慮したのか、[ k ] の子音で代用されることもあるようです。日本語は発音に母音が必ず入るので日本人には難しい発音です。英語での発音はアルファベットの X を発音記号で表した時の [ eks ] から e と s を除いた時の音と考えると想像がしやすいかも知れません。これは舌の根元で空気が出て音声になる前に止めるという感じです。そこで英語圏ではネス湖の怪獣はカタカナにすると「ロック・ネス・モンスター」に近くなります。音声の付いた電子辞書などで loch と調べると発音を聞くことが出来ます。そうすれば明らかに「ホ」ではないことが分かるでしょう。

 

 アイルランドに住んでいたことがあり、そのころ何度か行ったところが、首都ダブリンの南のウィックローというところにある Glendalough です。首都近郊の人気の観光地で昔の教会跡です。それまで現地の発音を元に「グレンダロック」のような発音で呼んでいたので、日本に戻って日本語の観光ガイドブックを見た時にグレンダロッホと紹介されているのを見て「グレンダロッホって何?」と驚きました。この場所は英語では Glendalough と書かれていますが、これはアイルランド語の発音を元に英語化 (Anglicized) された綴で、アイルランド語では Gleann Dá Loch と綴られます。この地名もカタカナで書くなら「グレンダロック」の方が近いでしょう。意味は「二つの湖の谷」ということです。日本で見かける本や雑誌、ネット情報などでは、どこもグレンダロッホになっていますね。


 余談ですが、作曲家のバッハ (Bach) をドイツ語ではなく英語で発音した時も [ba:x] となって最後は軽い「ク」の音に近いような子音で、これも強いて表記するなら「バック」です。


 スコットランドの Burn's Night (1/25) があった後、ウェールズの St David's Day (3/1)、そしてアイルランドの St. Patrick's Day (3/17) と、春はケルトな気分になるので、こんな話題を取り上げてみました。