今回は少々趣向を変えて、ある日本語の使い方について書いてみたいと思います。
暖かくなると、お花見やピクニックで外でお弁当を食べる機会があり、青空の下でのお弁当は美味しいですね。ところで、コンビニエンス・ストアに並ぶパッケージ化された食事に「必ず温めて下さい」と注意書きが記載さたものがありました。併記された英語に 〜Bento と書かれています。これ、弁当と呼ぶのはおかしくないかと思ってます。

お弁当の関連単語を列挙すると、幕の内弁当、駅弁、お花見弁当、キャラ弁、早弁、愛妻弁当、仕出し弁当、手弁当、折弁当、日の丸弁当、といった具合。どれも家から持って出て食べたり、出先で買って食べたりするのが「弁当」のようです。すると、必ず温めなければならないものは弁当でしょうか。たかが弁当にヒステリックになっているようですが、外装に Bento とアルファベットで書いてあることが気になったのです。

弁当を国語辞典で調べると
大辞林:
① 容器に入れて携え、外出先で食べる食べ物。② 外出先や会議の席などで、取り寄せて食べる食事。
広辞苑:① 外出先で食事するため、器物に入れて携える食品。また、その器物。② 転じて、外出先や会合などでとる食事。
先に見かけたコンビニ弁当は、電子レンジでも置いてあるグランピングならともかく (笑)、ハイキングやキャンプでは食べられないですね (キャンプはほとんど自炊ですけれど) 。
電子レンジは英語では a microwave oven (マイクロウェイヴ・オーヴン) と呼ばれ、オーブンの一つです。今は肉や野菜を電子レンジで調理する料理もあります。電子レンジの利用も調理の内なので、調理をしなければならないものを弁当と呼ぶのはおかしくありませんか。
bento のことは、どこかの公共放送が「今や世界で人気の日本文化だ」と言わんばかりに話していますが、外国人に聞いてみると、bento のことは日本の料理を出す店で見かけたり、日本文化の話しをしていて出てくることはあっても、普段使いで bento が会話に出てくることは無いということです。弁当は boxed meals などと訳されたりすることがあります。コンビニエンス・ストアで料理名を英語で書くからには外国人を意識しているのだと思います。そもそも、そんなに浸透しているわけでもない bento という単語を、コンビニ弁当に英語で書く意味があるのか疑問です。bento とは「温めても良いけれど、そのままでも食べられる」ものを呼ぶべきだと思います。

電子レンジで温めなければならない食事は、ready-to-eat meals や、refrigerated dinner などとも言えるかも知れません。他にも、温めないとならない prepackaged meal には、アメリカの TV dinner や イギリスの ready meal、他にも microwave meal や frozen meal などがあります。日本語でなら何と言おうと構いませんが、英語で書くなら、標準的な「弁当」を理解していない外国人にも混乱が無いよう、定義をはっきりさせておいた方が良いと思います。温め専用の食事に Bento と書くと、今後、日本文化の紹介の際に誤解を招くのではないでしょうか。海外での bento を説明する記述には Well-balanced packed meal (栄養バランスの取れた包装済みの食事) と説明されていたりしています。この良いイメージを壊したくはありませんよね。